コラテラル

今まで善人ばかりを演じてきた俳優が、新境地開拓とかいって悪役に挑戦したりすると大抵ロクなことにならなかったりするもんでございます。この映画の殺し屋トムちん*1も、そういった意気込みといつものオレ最高オーラがうまい具合に混ざり合って、見事なすっとこキラーを生み出してしまいました。
なにしろ一晩で5人の殺しを任されるほどの腕利きのはずなのに、プロらしい殺人スキルを見せてくれるのはチンピラ撃退のときとジャズマスターを殺る時ぐらいで、あとはその場の勢いで殺しまくりで、能天気きわまりない。そもそも、5人目のターゲットのナイオビさんとは冒頭ですれ違っているのに、何もせず素通りするとはどういうことか。つうか、あんた彼女のオフィスがあるビルから出てきてるじゃん。そんなことだから最後にまた来たところを戻る羽目になるんです!無計画にも程がありますよ、まったく。
更には、何か不都合が起きれば危機回避はタクシストのジェイミー・フォックスにまかせっきりだし、「いつもどおりの行動を取らなければ怪しまれるから」という理由で彼の日課であるジェイミーママのお見舞いに行かせて自分もそれに同行するし、最後の死に様は「GONIN」のたけしなみだしで、そんなトムちんに一晩中つきあわされるジェイミーさんの苦労は計り知れませんな。ご愁傷様でした。
ともあれ、ハタ迷惑で行き当たりばったりでイメージの「悪い人」という殺し屋トムは、ある意味悪役の新境地を開拓したとも言えなくもないような気がしなくもないと思いました。トムちん自身も単純に冷酷なキャラにはしたくなかったと言っているので、この解釈はあながち間違いではないかも知れませんね(ほぼ間違いでしょう)。


おまけ:冒頭にジェイソン・ステイサムが出てきてちょっと得した気分になりました。ほんの数秒の出演ではありますが、吹替えの時にはぜひ山路和弘にやっていただきたい所存であります。

*1:本名トマス・クルーズ・マポーザー4世。貴族っぽいかつマリポーサっぽい