セルラー

日比谷映画も3月で閉館かあ。味のある映画館で好きだったのだがなあ。


高校の生物教師である人妻が、ある朝得体の知れない男たちに拉致・監禁される。頼みの綱は破壊された電話機のみ。拉致犯の目を盗んでむき出しになった配線をつなぎ合わせ、偶然つながった電話の先の見知らぬ男に助けを求める人妻。はたして男は人妻を救うことが出来るのか!?


ジャック・バウアー捜査官に狙われたブルズアイが電話ボックスに貼り付けにされる「フォーン・ブース」の脚本家が書いたもうひとつの電話スリラーということで、観る前は薄暗くジメっとしたサスペンスを予想したのですが、ふたを開けてみたら実はアクションコメディだったのでびっくりした。


まあ実際、人妻キム・ベイシンガーが監禁されている場所が屋根裏部屋ということもあって、そこは薄暗さ満点なのです。が、舞台であるロサンゼルスのまぶしい青空や、助けを求められた携帯の主クリス・エバンスのチャラさ加減、周囲の人たちののんきな反応や、2度も車を盗まれて踏んだり蹴ったりの弁護士、バッテリーが切れそうになるとうまい具合に携帯ショップが見つかる都合のよさといった、そこかしこに漂う能天気ぶりがネガティブな雰囲気を見事に帳消しにしてくれます。
デッドコースター」や「マトリックスリローデッド」のカーチェイスなどで鳴らしたデビッド・R・エリスの演出は、必要以上に車をぼかすかクラッシュさせたりとサスペンスとは程遠いものでした。が、無理にシナリオの雰囲気にあわせたりせず自分の得意なフィールドに引っ張り込んでしまう豪腕ぶりはとてもハリウッド的で、かえって潔いと思いました。この映画が持つマッチョ感は「ジャッカル」を思い起こさせます。


ラスト、無事助かった人妻キムにお礼がしたいといわれたクリスが「じゃあ、もう電話を掛けないでくれ」というオチも、とてつもなくハリウッド的。アメリカ人はジョークでしか会話できんのか。